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AUG 2011

『手を抜く美学?』

今の僕の暮らしぶりというのは、最低に聞こえるかもしれませんが、はっきり言って『働かない主義』であります。
働くのが嫌なわけではありません。僕が何かして意味があるのであれは喜んで働かせていただきます。
しかし一般的に日本人の考える「仕事命!遊んだり休んだりする暇があれば働きなさい!一生現役こそ最高の美学!」的な発想などとはまるで逆の考え方なわけであります。。。
基本的に......
「好きなことを、好きな人と、好きな時間に、好きなだけしていたい。。。」というところからはじまり、そうしたらお金や自由な時間が必要なわけで結局は働かなければいけないわけですが、そこで次にくるのが......
「どうせ働くなら楽しい方がいいし、たくさんお金がもらえた方がいいし、でもできるだけ短い時間がいい。。。」となり、とはいえ高いポジションにつき大金持ちになって贅沢三昧な暮らしをしたいなんて気はさらさらないので、「ひと月ごとになんとかその月は暮らせそうになったら、僕じゃないとできないと言っていただけるクライアントさん以外の仕事はあまり入れず、プライベートな時間を増やして自分の時間を大事にしたい。。。」と
最後はやはりなるべく無理して働きたくないという結論に達してしまうわけであります。。。

 *ワイン大好きなわたくしはイタリアロケとかだと撮影終了とともに道端でこんな感じ...好きな物は我慢できない子供っぷりに後ろに写るH&Mのケーイチもあきれ顔..(笑)

現実的に、僕がやってきた『ファッション』というジャンルにおいては、僕自身嫌いじゃないけど好きでもない的感覚であまり興味もなくだらだらと続けてしまったのも悪いのですが、そんな曖昧な僕よりも、さらに何倍も何十倍もみるみる日本のレベルが低下してしまった(日本はお洒落になったとか言う人いますけどとんでもない!)のも影響して、ある時期を境に「一生懸命やる!」ことをやめてしまいました...。
言い方は悪いですが「手を抜く」ようになったのです...とはいってもやる気がないということではありません!!
最初にも言ったように常に働いている(つまり常にビジネスライク...。)ことが美しいライフスタイルとされるこの日本において、「ファッション」をビジネスとして生きていくには、本来「遊び」の中から生まれる天才的な思いつきの感覚やそのときそのときの熱い感情から溢れ出す芸術的な要素は、今やこれっぽっちも必要とされず(7~80代は良かった...みんなかっこ良かった...涙)、アパレルではただひたすら安さにこだわり、万人受けするデザインや地味な色目ばかりを世に送り出し、売り上げだけを目的とした大手スーパーのような存在にカタチを変え...広告や雑誌業界ではかっこいいとか美しいとかは二の次どころかまるで意味をもたず、誰もがセンスや才能を見抜く気などさらさらないまま、とにかく使う人より格下でギャラが安く、なんでも「YES!」という便利な人が気に入られるといったのが日常化してしまい、その真逆がクリエイターなのに、クリエイターとしてとして生き残るにはどんなに才能があったとしてもそうならないと使ってもらえなくなってしまいました...。
ということはもうこの国のこの業界には「いいものを作りたい」とか「本物に出会いたい。」などいう発想がどこにも存在しなくなってしまったということであります。。。
そんな中、僕自身、誰もいないし聞こえもしないのに大きな声で叫んだりわめいたりしたところで何の意味も持たないということにようやく気づいたのが40歳越えてからでしょうか。
しかしそこでさじを投げるのではなく、どうしたら僕たちが諸先輩たちから受け継いできた「夢を与える」仕事を復活させ、その素晴らしさや意味をわかってもらえるのかを悩みに悩んだ結果、ようやくでてきたのが「手を抜く」という行動だったわけであります...と言っても悪い意味ではなく、力だけで押してたものから「技巧派」にシフトしたとでもいいましょうか。。。
たいして才能もないのにと言われる方も多いとは思いますが、僕はこう見えてビジネス思考というよりは完璧にアーティスト思考(といってもゆるいもんですが...。)なもので、自由な時間を奪われたあげくに一生懸命やればやるほど非難される(僕がはりきって何かをやりすぎると一般的に難しすぎるらしく...涙。)という結果に30代まではたいそう違和感を覚えたものですが、それがさらに悪化した今...その時代その瞬間に求められてないんならそれで、こちらも少しは大人にならなければいけないんじゃないかと思い出したのです。。。
つまりもっとできるのにそれ以上いらないとされているなら、できない...或いは知らないふりができることがその仕事を成功させるベストな状況なんじゃないかと考えるようになったからであります。。。
逃げ出したわけではありません...。
うまく説明できないんですが、上からしか見れなかった自分の目線を思いきってぐっと下げてみたら(生意気でスミマセン...。)目からうろことでも申しましょうか、野球に例えると常ににジャイアンツの4番打者でいなければ
許せなかった自分が、体力の衰えと引き換えに顔を出すテクニック&経験の進歩によって、逆に1~2番打者としての役割もしっかりこなせる柔軟な身体と精神を身につけられたなら、いつまでも自らフルスイングでバットを振り回しているだけでなく、黒子と化して次世代の3~4番を生み出すチャンスを作り出すことができるかもしれないし、そこにつなげる大事な役割として必要とされるのではないか?
といったようなことに気づかせられ、つまりそれが手を抜くと言いますか力を抜くという結果になったというわけであります。。。
全速力で走る必要もなく、逆に力をぬくことによって最終的にはより良い結果を出す『こつ』を身につけたことによって、僕の仕事へのスタンスは一変!!...ようやくストレスレスな日々をおくれるようにもなってきました。
どの世界でも同じようなことは起こっているとは思いますが、やはりなんてったって『ファッション』業界です...本当はいつまでも憧れのライフスタイルを提案し続けなければいけないのに当の本人達がさえない毎日を送っていては話しになりませんもんね...(笑)。ホントいつでも笑って過ごしていたいものです...が、、、そうもいかないんですね、これが!!!

*この夏一番の快晴から一転、観測史上最高のゲリラ雷雨が降り始める瞬間の8/26のアクアラインにて(ゴルフ帰りなんですが...)。見たこともない津波のような雲が青空をみるみる飲み込んでいく光景に恐怖心さえ覚えました...。
まるで僕の人生のよう。。。一瞬先は闇。トンネルを抜けるとそこは水没した大都会でした...。ー川端康成著、『雪国』風に...。ー

話しはいきなり変わってここ数日のことになりますが、まぁ~恐ろしくついてない日々が続いておりまして...大事にしていた人に熱心にアドバイスすれば意味がわからないときれられ、料理をすればサラダ油がとんで顔面&両腕に火傷をおい、大きなCMの撮影は予算の問題でなんと撮影本番一週間前にドタキャンと...こんなのまだごく一部っつうぐらい、いやいやホント何かにとりつかれたかのようにまったくいいこと無しなんであります...(涙)。
そんな笑っちゃうぐらいバイオリズムが崩れてしまっている時に僕は何をするかと言うと、外にも出ず誰にも会わず、家でせっせと掃除をしたり(特に運の行き来する玄関!)汚れた靴を磨いたり......
とにかくなぜか不思議にやたらものをきれいにしたくなるのであります!
今日もいきなり涼しくなってきたのでそろそろサンダルだけじゃヤバいと、この時期履きそうなものをやたら磨きまくってしまいました。。。
靴箱の奥から久々に引っ張りだしたものは...

まだ残暑は続きそうなので軽めな堅い靴...ということで「Berluti」の『アンディ』(グリーン)や『アレッサンドロ』(レッド)をはじめ...。

(左)これは4~5年前の「JIL.SANDER」!今からは想像できないクラシカルなデザインとベージュカラーの色目がお気に入り。
(右)素足で履けるダークブラウンのタッセルは「LOEWE」のもので、あるファッション誌の特集で当時影響力の大きかった大物女優さんにここのドレスを着せたお礼にプレセントしていただいたもの!

(左)20年以上前から履き続けているリアルリザードの「J.M.WESTON」!黒いのも同じウエストンなんですが、皮がとてもやわらかく完璧に素足用といった感じのレアもの!
(右)これまた20年近く前のコードバンの「ALDEN」!磨けば磨くほどピカピカで味がでます。。。そして果てしなく派手なパープルにしてとオーダーした「CORTHAY」のローファー!
とすっかり忘れかけていた名品たち!光り輝く靴を見ていると、同時に悪いつきも磨き落とせた気がして気分爽快であります!
あっ!そう言えばこういう時も何事も一生懸命だった過去の僕であれば、いらいらしっぱなしで人さまに八つ当たりしたりしていたんでしょうが、手を抜くテクニックを知った今だからこそこうやってじっと運が向上するまで
笑って穏やかに過ごせるようになったに違いありません...(笑)。
それにしてもあれだけ自分の身を守る為に「刺」だらけの角張った人間だった自分が、歳をとっていくと「角」がとれて丸くなるとは聞いていたものの、まさかこんなにも身体とともに丸くなるとは!!
しかし本心はまだまだ熱い人間でありますので、そう油断させといて実は見たこともない強烈な「刺」をいまだ何本か隠してるかもしれませんので、みなさまお近づきの際は念のためお気をつけあそばせください。。。(笑)